借金返済|残業代請求事件

平成
16
原告

主文

1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

1被告Aは,原告に対し,別紙1記載の謝罪文を交付せよ。
2被告Bは,原告に対し,別紙2記載の謝罪文を交付せよ。
3被告東京都は,原告に対し,金18万1366円を支払え。

第2事案の概要

本件は,立川市立α中学校(以下「α中」という。)の教諭である原告が,平成10年4月1日から同14年3月31日までの間同校長であった被告A及び同年4月1日から同校長となった被告Bの違法な職務命令によって,同13年9月5日から同15年10月27日までの間,別紙3超過勤務一覧表「原告の主張」欄記載のとおり超過勤務を強いられた(以下「本件超過勤務」という。)と主張して,被告A及び同Bに対し別紙1及び2記載のとおりの謝罪文交付を求め,また,被告東京都に対し超過勤務手当18万1366円の支払を求めた事案である。
1争いのない事実等(証拠により認定した事実は,当該証拠を文末の括弧内に記載した。)(1)当事者
ア原告
(ア)原告は,昭和57年4月1日,東京都清瀬市公立学校教諭に任命され,清瀬市立β中学校,調布市立γ中学校,同市立δ中学校,福生市立ε中学校で勤務した後,平成10年4月1日からα中で勤務している。
(イ)原告の職務内容
原告は,α中において生徒に対し理科を教えていたが,同校における平成13年度から同15年度までの間の職務内容は,以下のとおりであった(乙1ないし3)。
a平成13年度3年3組担任
校務分掌等教務(教育課程全般)
b平成14年度1年3組及び4組各副担任
校務分掌等図書視聴覚,行事委員会(主に儀式行事担当),校内研修推進委員会委員,放送委員会指導担当c平成15年度2年4組副担任
校務分掌等図書視聴覚,校内研修推進委員会委員,放送委員会指導担当(ウ)原告の給与・手当等は,市町村立学校職員給与負担法(昭和23年法律第135号)1条により被告東京都が負担している。
また,原告の給与・勤務時間その他の勤務条件には,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号,以下「地方教育行政法」という。)42条により被告東京都の条例が適用される。
イ被告等
(ア)被告Aは,平成10年4月1日から同14年3月31日までの間,α中の校長であった。
(イ)被告Bは,平成14年4月1日から,α中の校長である。
(ウ)α中の平成13年度及び同14年度の教頭はC(以下「C前教頭」という。)であり,同15年度以降の教頭はD(以下「D教頭」という。)である(乙1ないし3)。
(2)α中の勤務形態
α中の教育職員の勤務形態は,出勤時刻が午前8時15分,退勤時刻が午後5時,休憩時間が午後4時から午後4時45分までの間,休息時間が午前10時35分から午前10時45分までの間,午前11時35分から午前11時40分までの間,午後1時から午後1時15分までの間と定められている。
なお,休息時間は自由利用ができず勤務時間に含まれている。
(3)被告東京都の教育職員の超過勤務,教職調整額の支給等に関する条例の定めア学校職員の給与に関する条例(昭和31年東京都条例第68号,以下「給与条例」という。)(超過勤務手当)
第17条学校職員の勤務時間,休日,休暇に関する条例(平成7年東京都条例第45号)第3条,第4条第1項及び第2項並びに第6条に規定する正規の勤務時間を超えて同条例第11条の規定により勤務することを命ぜられた職員には,正規の勤務時間を超えて勤務した全時間に対して,勤務1時間につき第20条に規定する勤務1時間当たりの給料等の額に正規の勤務時間を超えて勤務した勤務の区分に応じてそれぞれ100分の125から100分の150までの範囲内の割合(その勤務が午後10時から翌日の午前5時までの間である場合は,その割合に100分の25を加算した割合)を乗じて得た額の合計額を超過勤務手当として支給する。
(2ないし4項省略)(勤務1時間当たりの給料等の額の算出)
第20条第16条第1項,第17条第1項及び第3項並びに前2条に規定する勤務1時間当たりの給料等の額は,給料の月額及び人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める手当の月額のそれぞれに12を乗じて得た額を,人事委員会の承認を得て教育委員会規則で定める年間の勤務時間でそれぞれ除して得た額とする。
イ義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例(昭和47年東京都条例第12号,以下「給特条例」という。)
(義務教育諸学校等の教育職員の教職調整額の支給等)
第3条義務教育諸学校等の教育職員のうちその属する職務の級がこれらの給料表の1級又は2級(平成14年東京都条例第183号(平成15年4月1日施行)による改正後は,「1級,2級又は特2級」)である者には,その者の給料月額の100分の4に相当する額の教職調整額を支給する。
2項前項の教職調整額の支給に関し必要な事項は,東京都人事委員会の承認を得て東京都教育委員会規則で定める。
3項義務教育諸学校等の教育職員については,給与条例第17条及び第18条(注,休日給に関する規定)の規定は適用しない。
(義務教育諸学校等の教育職員の超過勤務及び休日勤務)
第5条義務教育諸学校等の教育職員については,原則として,超過勤務及び休日勤務はさせないものとする。
2項義務教育諸学校等の教育職員に対し超過勤務及び休日勤務をさせる場合は,次に掲げる業務に従事する場合で,臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとする。
1生徒の実習に関する業務
2学校行事に関する業務
3教職員会議に関する業務
4非常災害等やむを得ない場合に必要な業務
(4)原告は,平成15年2月6日付けで東京都人事委員会に対し,1被告A及び同Bは学校運営に当たり労働基準法32条,34条を遵守すること,2被告A及び同Bは労働基準法32条,34条に違反した事実を認め速やかに法的処罰を受けること,3東京都教育委員会は原告に対し,同13年9月から同14年12月までに原告が行った休憩時間内及び勤務時間外の労働に対する賃金(合計14万4289円)を支払うこと,4東京都教育委員会は労働基準法32条,34条が遵守されるよう被告A及び同Bを指導すること,5東京都教育委員会は各学校において労働基準法32ページ(1)
条,34条が遵守されるよう具体的な措置を講ずることを要求する措置要求を行った。
これに対し,東京都人事委員会は,平成15年9月2日付けで,前記1の要求のうち被告Aに係る部分及び前記2ないし5の要求を却下し,前記1の要求のうち被告Bに係る部分を棄却する旨の判定をした。
(乙4,5)2争点,当事者の申立て及び主張
(1)原告は,本件超過勤務をしたか(争点1)。
【原告】
原告は,別紙3超過勤務一覧表「原告の主張」欄記載のとおり本件超過勤務をした。
【被告東京都】
被告東京都の認否,反論は,別紙3超過勤務一覧表「被告東京都の認否,反論」欄記載のとおりである。
(2)原告が本件超過勤務をしたと認められる場合,被告東京都は原告に対し超過勤務手当の支払義務があるか(争点2)。
【原告】
ア原告の使用者である被告東京都は,原告に対し,本件超過勤務について,労働基準法37条に基づいて超過勤務手当の支払義務がある。
本件超過勤務についての手当額は,別紙4記載のとおり合計18万1366円である。
イ被告東京都の主張に対して
(ア)被告東京都の教育職員について,給特条例5条2項に該当しない場合に超過勤務,休日勤務をさせ,その対価として超過勤務手当を支払うことは制度上予定されておらず,同条例3条1項の教職調整額が超過勤務手当に相当すると解することはできない。
給特条例3条3項は,被告東京都の教育職員について同条例5条1項により超過勤務,休日勤務が原則として禁止されていることから,超過勤務手当に関する給与条例17条,休日給に関する同条例18条の適用が除外されることを注意的に規定したものにすぎない。
実質的にみても,割増率を25パーセントとすれば1日当たり15分強の超過勤務手当分にすぎない教職調整額を支払うことによって,労働者の生活保障のための最低基準である労働基準法37条を排除してしまうことは,憲法25条に違反するというべきである。
(イ)被告Aないし同Bは,原告に対し,以下のとおり,職員会議,学年会,三者面談等において黙示の職務命令を出して超過勤務を強制し,α中では超過勤務が常態化していた。
なお,α中に勤務する教育職員は,生徒や保護者に対する対応を常に要求されるため,本来の勤務時間を休憩時間に振り替えることは事実上不可能であるし,被告Aないし同Bは,職員会議等が午後4時を経過した場合に,原告に対し,具体的に休憩時間の振替を指示したことはない。
a職員会議について
職員会議は,生徒指導,行事をはじめ学校内の重要課題を議論するため,校長が主催する会議であり,教育職員はこれに出席することが義務づけられている。
α中における職員会議は,通常午後3時前後に開始して午後4時までに終了する予定で開催されるが,重要課題が多い場合には午後4時を過ぎることがしばしばあった。
職員会議が休憩時間に掛かったからといって勝手に中座すれば任務懈怠として懲戒処分の対象と成り得るのである。
そうだとすると,α中における職員会議は,被告Aないし同Bによって会議続行の黙示の職務命令が出されていたということができる。
b学年会について
学年会は,授業進行や生徒指導の在り方など学年毎の課題を議論するため,各学年の担任,副担任が集まり,通常週に1度,必要があれば適宜開催される会議である。
α中における学年会は,通常午後3時前後に開始して午後4時までに終了する予定で開催されるが,重要課題が多い場合には午後4時を過ぎることがしばしばあった。
校長が期待,要求するような生徒指導を行うためには,各学年の担任,副担任が意思統一をするために学年会を開催する必要があり,学年会は自主的に開かれる会議ではない。
学年会は,校長が主催したり直接これに出席するわけではないが,学校行事として予定され,校長も内容を積極的に把握しているのであり,被告Aないし同Bから原告に対し学年会に必ず出席するように黙示の職務命令が出されていたといえる。
c三者面談について
三者面談は,教育職員,保護者,生徒の面談による個別指導である。
α中における三者面談は,短期間に学級全員について行うため午後4時から午後4時45分までの休憩時間及び午後5時以降に予定を組まざるを得ないこと及び予定時間を超えることも多いことから,必然的に超過勤務とならざるを得ない。
原告は,職員会議で決定された三者面談を期間内に実施しなければならず,このため被告Aないし同Bから,原告に対し,休憩時間を削り,退勤時刻を超えてでも三者面談を実施せよとの黙示の職務命令が出されていたといえる。
d保護者会について
保護者会も校長の管理下で行われており,被告Aないし同Bから原告に対し黙示の職務命令が出されている。
平成14年10月30日開催の臨時保護者会は,学級崩壊に対する対策のため開催されたものであり,できるだけ多くの保護者に参加を求めるため午後7時から開催された。
したがって,前記臨時保護者会は,被告Aないし同Bから原告に対しこれに出席せよとの黙示の職務命令が出されていたといえる。
e校内研修会について
校内研修会は,学校が主催し,教育職員の資質向上のために行われるものであり,原告は事実上これに出席することを義務づけられている。
したがって,被告Aないし同Bから原告に対し校内研修会に出席せよとの黙示の職務命令が出されていたといえる。
f登校指導について
登校指導は,校長の下にある生活指導委員会の発案で例年2回行われており,学年会で具体的な担当者が決められる。
原告は,他の教育職員の負担を増やさないため事実上登校指導への参加を強制されていた。
したがって,被告Aないし同Bから原告に対し登校指導に参加せよとの黙示の職務命令が出されていたといえる。
gその他
本件超過勤務のうち前記aないしf以外の業務についても,被告Aないし同Bから原告に対し黙示の職務命令が出されていたといえる。
【被告東京都】
ア被告東京都が,原告に対し,本件超過勤務に対し,手当を支給しなければならないとする法文上の根拠規定は存在しない。
公立の義務教育諸学校の教育職員については,その勤務態様の特殊性から,労働基準法37条に定める時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払等に関する規定の適用が排除されている(平成15年法律第117号による改正前の国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和46年法律第77号,以下「給特法」という。)10条)が,他方で国立の義務教育諸学校の教育職員の給与に関する事項を基準として教職調整額の支給その他の措置を講じなければならないとされ(同法8条),俸給月額の100分の4に相当する額の教職調整額が支給される(同法3条)こととされている。
これらの規定を踏まえて,被告東京都では給特条例を制定し,東京都内の義務教育諸学校等に勤務する教育職員に係る超過勤務手当及び休日給について定める給与条例17条,18条を排除した(給特条例3条3項)上で,同職員に対ページ(2)
し給料月額の100分の4に相当する額の教職調整額を支給することとしている(給特条例3条1項)。
これらの規定からすれば,被告東京都は,教育職員である原告に対し,超過勤務手当を支給することができない。
なお,校長は,教育職員に対し給特条例5条に基づき超過勤務を命じた場合であっても代休日の指定等の措置を行っている。
イ仮に,給特条例5条2項に規定する限定的に列挙された事項を超えて職務命令が発せられ,教育職員がこれに従事したような場合には,超過勤務が命ぜられるに至った経緯,従事した職務の内容,勤務の実情等に照らして,それが当該教育職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態でなされ,しかもそのような勤務が常態化しているなど,かかる超過勤務等の実情を放置することが同条例5条2項において超過勤務を命じ得る場合を限定列挙して制限を加えた趣旨にもとるような事情が認められるときには,労働基準法37条ないし給与条例17条の適用は排除されないものと解する余地がないではない。
しかし,本件超過勤務の勤務内容は,以下述べるとおり,被告Aないし同Bが,原告に対し,その自由意思を強く拘束するような形態でなされたものではなく,専ら原告の自主的な判断に基づいて行われたものであるし,また,そのような勤務がα中において常態化していたともいえない。
したがって,本件超過勤務に対しては,労働基準法37条ないし給与条例17条が排除され,その結果,原告は,被告東京都に対し,超過勤務手当の請求をすることができないというべきである。
(ア)職員会議について
aα中における職員会議は,原則として,月1,2回,水曜日の午後2時40分から午後4時までの間に行われていた。
原告の主張によっても,α中の職員会議の終了時間が午後4時を経過したのは,平成13年度が全27回中3回,同14年度が全28回中7回,同15年度(同年4月から10月までの間)が全8回中1回であり,このうちその日のうちに休憩時間の振替取得が不可能となる午後4時15分を経過したのは,同13年度が2回,同14年度が5回,同15年度が1回にすぎなかった。
したがって,α中の職員会議が休憩時間内にかかって行われることが常態化していたとはいえない。
b被告Aは,平成13年度において,職員会議が午後4時を過ぎる場合には,最長4時15分まで延長することについて出席者に確認し,出席者が午後4時45分以降に休憩時間を振り替えられるように配慮していた。
被告Bは,平成14年度において,年度当初の職員会議において,原告を含む教育職員に対し,職員会議が午後4時に終了しなかった場合は適宜休憩時間を午後4時45分以降に振替取得することを説明した。
また,C前教頭は,平成14年度において,前記被告Bの指示を踏まえ,職員会議が午後4時を過ぎた場合,原則として出席者に対し,休憩時間の振替取得について指示するよう務めていた。
さらに,D教頭は,平成15年度(同年4月から10月までの間)において,同年7月2日実施の職員会議を除き,被告Bの指示に従って職員会議が午後4時を過ぎた場合,出席者に対し休憩時間を午後4時45分以降に振替取得するように指示していた。
c被告A及び同Bは,職員会議を授業が5時限(午後2時10分)で終了する水曜日の午後に設定し,会議の進行上やむを得ず午後4時を過ぎてしまうような場合には出席者の意見を聴くようにしていたが,その際,原告を含む出席者から異議等が出されたことはない。
(イ)学年会について
α中における学年会が,被告Aないし同Bによる超過勤務命令により正規の勤務時間を過ぎて行われたことはない。
学年会は,通常,休憩開始時刻である午後4時終了を目途に実施されているが,学年主任を中心として各学年毎に教育職員が主体的に運営しているものであり,校長はその会議運営について教育職員の裁量に委ねており,特にその報告も求めていない。
会議の運営上出席者が必要に応じて午後4時を過ぎるまで会議を延長したとしても,それは被告Aないし同Bの指示によるものではない。
むしろ,被告A及び同Bは,事前に職員会議や運営委員会等で学年会等について正規の勤務時間内に効率的に行うように指示していた。
なお,被告Aないし同Bは,これまで原告ら教育職員から,学年会が休憩時間にかかって延長されたことにつき抗議等を受けたことはない。
さらに,α中における学年会は,概ね午後4時終了を目途に学年主任を中心に能率的に行われており,超過勤務が常態化していたとはいえない。
(ウ)三者面談について
被告Aないし同Bは,原告に対し,三者面談を行うに当たり超過勤務を強制しておらず,三者面談における超過勤務が常態化していたこともない。
すなわち,α中における三者面談は,校長が予め職員会議で担任教諭に確認の上,毎年,11月及び12月に各5日間の日程で実施されているところ,原告が平成13年度に受け持った35名程度の生徒数であれば,1日当たり7名程度と面談すればよい。
また,α中では,三者面談期間中は午後の授業を中止して三者面談を行えるように配慮しており,日程調整も原則として午後4時に終了するように各クラスの担任教諭の裁量に任されていたのであって,期間設定に無理はなかった。
なお,被告A及び同Bは,これまで原告から三者面談の期間設定等について抗議等を受けたことはない。
(エ)保護者会について
α中における保護者会は,通常,午後の授業を中止し,あるいは授業が5時限(午後2時10分)で終了する日の午後2時から午後4時までの間に開催され,概ね1時間から1時間30分で終了しており,原則として勤務時間内に行われていた。
また,α中における保護者会は,主として学年主任等が学級運営に関して保護者の理解を求めることを目的として実施するものであり,校長は通常これに出席せず,実施した内容を校長及び教頭に対し報告する義務はなかった。
そもそも,α中における保護者会は,実施回数が年に数回程度であり,仮に勤務時間外に開催されたとしても,それは教育職員による自主的な判断によるものであって,被告Aないし同Bが原告に対し保護者会に関して超過勤務を強制したことはないし,超過勤務が常態化していたともいえない。
(オ)校内研修会について
α中における校内研修会は,休憩開始時刻である午後4時までに概ね終了していた。
仮に,校内研修会が当初の予定時間を超過することがあったとしても,それは教育職員の自主的な判断に基づくものである。
被告Aないし同Bは,校内研修会における超過勤務を強制しておらず,超過勤務が常態化していたともいえない。
(カ)校務分掌部会について
被告Aないし同Bは,原告に対し,校務分掌部会に関し超過勤務を強制したことはない。
また,本件超過勤務中,教務部会が休憩時間に食い込んだのは2回だけであり,超過勤務が常態化していたとはいえない。
(キ)登下校指導,校内見回りについて
α中における登下校指導,校内見回りは,生活指導部若しくは各学年担任教諭等の呼びかけで教育職員が自主的に行っており,被告Aないし同Bが教育職員に対し超過勤務命令を出して強制的に行ったものではない。
また,これらの指導は,常日頃行われているものではなく,これらの指導に関し超過勤務が常態化していたとはいえない。
(ク)その他
a備品点検について
α中における平成14年6月26日の備品点検は,例年夏季休業中に立川市教育委員会が実施している備品点検の準備作業として行われたものである。
当該備品点検は,午後4時までの予定で実施されたのであって,実施計画自体に無理はなかった。
仮に原告が勤務時間外に当該備品点検作業を行ったとしても,それは自主自発性に基づくものであって,被告Bが原告に対し超過勤務を命じたものではない。
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b運動会係分担業務について
原告は,平成13年9月22日実施の運動会において会場設営係を担当していた。
仮に原告が当該運動会終了後の休憩時間に後片付けを行ったとしても,それは飽くまで原告の自主的な判断に基づくものであり,被告Aが原告に対し超過勤務を命じたことはない。
また,原告は,当該運動会開催日の昼休みに,予め休憩を取得することもできた。
c私立ζ高等学校への出張について
原告は,平成13年10月16日,私立ζ高等学校に中学校対象の入試説明会のため出張した。
原告は,事前に同校の説明会が午後4時から開催されることを知っていたのであるから,予め休憩を振替取得した上で同校に出張することができた。
したがって,被告Aは,原告に対し,私立ζ高等学校の入試説明会に関し,超過勤務を強制したということはできない。
dその他の校務分掌業務について
原告は,前記以外の校務分掌業務についても,飽くまで自己の自主的な判断に基づいて勤務したものである。
被告Aないし同Bは,原告に対し,前記以外の校務分掌事務について,超過勤務を強制したことはない。
(3)原告は,被告A及び同Bに対し,謝罪文の交付を求めることができるか(争点3)。
ア本案前の申立て
【被告B】
原告がα中の校長である被告Bに対し謝罪文の交付を求めることは,公務員の個人責任を追及するものにほかならず,このような訴えは国家賠償法の趣旨に照らして許されない。
したがって,原告の被告Bに対する訴えは不適法であって却下を免れない。
【原告】
被告Bの前記申立ては争う。
イ本案の主張
【原告】
(ア)公務の執行に違法がある場合,当該公務の違法性が重大であり,かつ当該公務員がその違法性を認識している場合には,公務員の個人責任が認められるべきである。
この点,被告A及び同Bは,東京都の教育職員には給特条例5条2項に定めるほか超過勤務を命ずることができないにもかかわらず,前記(2)【原告】で主張したとおり原告に対し職員会議,学年会,三者面談等について黙示の職務命令を出して超過勤務を強制し,原告の休憩時間を確保するような手当をしなかった。
前記被告A及び同Bの職務命令は極めて違法性が強く,同人らは給特条例5条2項を熟知しており違法性の認識も十分ある。
したがって,原告に違法な職務命令を出した被告A及び同Bは,原告に対し,個人責任を負うべきである。
(イ)教育職員が休憩時間を奪われることは人間としての尊厳を取り戻すための時間を奪われるに等しく金銭賠償だけでは原状回復として不十分であること,将来の違法な超過勤務を根絶するため違法な超過勤務を命じた校長に対し厳しい責任追及がされてしかるべきであることから,原告は被告A及び同Bに対し,民法723条を準用して謝罪文の交付を求めることができる。
【被告A及び同B】
(ア)国家賠償法の趣旨に照らし,被告A及び同Bは,公務員個人としての責任を負わない。
被告A及び同Bが,原告に対し,違法な職務命令を出したとの原告の主張は否認する。
(イ)民法は不法行為に対する救済方法として金銭賠償を原則としている(民法722条,417条)ところ,名誉権の侵害については,その法益の特殊性からして,金銭賠償のみでは被害者の被った損害の填補として不十分な場合が少なくないこと,金銭賠償以外の適当な処分によって損害を填補することが適当な場合がありうることから金銭賠償の原則に対する例外を定めたものである。
そうだとすると,民法723条の準用は,名誉権とその性質を共通にする名誉・信用等の人格権の侵害の場合にとどまるのが相当であるところ,原告の被告A及び同Bに対する請求は,準用の範囲を超えており,失当である。

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第3当裁判所の判断

1争点1(本件超過勤務の有無)について
証拠(甲6ないし9,14,乙6の3,7,9ないし16,19ないし21,23,24,27,28,30,31,33,39,47,49,51ないし53,55,58ないし60,63,65,66,68,71,72,75ないし77,79ないし81,83,84,86,89,90ないし92,同7の1ないし4,6ないし9,12,同8の5ないし11,13ないし25,28,原告【1,20頁】)及び弁論の全趣旨によれば,原告は別紙3超過勤務一覧表「原告の主張」欄記載のとおり本件超過勤務を行ったものと認めるのが相当であり(ただし,平成14年9月25日の勤務内容は校内研修会であり(乙6の58,同8の16,原告【12頁】),同15年7月2日の職員会議には被告Bは出席していない(乙6の90,同17,被告B【1頁】)),当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
2争点2(超過勤務手当支払義務の存否)について
(1)前記1で判示したとおり,原告は本件超過勤務をしたことが認められるところ,原告は,給与,手当等の支給を負担する被告東京都(前記争いのない事実等(1)ア(ウ))に対し,労働基準法37条に基づいて超過勤務手当を請求している。
原告は前記のとおり請求の根拠法条として労働基準法37条だけを挙げているが,1被告東京都においては,地方自治法204条,204条の2,地方公務員法24条6項,25条1項,地方教育行政法42条で定める条例主義にのっとり,教育職員の超過勤務手当について給与条例17条で定めていることから,教育職員である原告が被告東京都から実際に超過勤務手当の支給を受けるためには同条によるべきと解されること,2給与条例17条は労働基準法37条を受けて制定された規定であることに照らすと,原告の被告東京都に対する本件超過勤務手当請求は,労働基準法37条のみならず給与条例17条に基づく請求と理解するのが相当であり,以上のとおり善解して,原告の請求が認められるのか否かについて検討することにする。
(2)給特法10条は公立の義務教育諸学校等の教育職員について労働基準法37条の適用を除外し,また,給特条例3条3項も東京都の義務教育諸学校等の教育職員(管理職手当を受ける者を除く。
以下単に「教育職員」という。)について給与条例17条(超過勤務手当に関する規定)の適用を除外している。
そうだとすると,給特法10条,給特条例3条3項の規定があるにもかかわらず,被告東京都の教育職員に労働基準法37条ないしは給与条例17条に基づく超過勤務手当請求権が認められるか否かが問題となる。
給特法は,国公立の義務教育諸学校等の教育職員について,超過勤務手当を支給すべきか否かという問題を立法的に解決するため制定されたもので,公立の義務教育諸学校等の教育職員については,労働基準法37条の適用を除外し(給特法10条),他方で国立の義務教育諸学校の教育職員の給与に関する事項を基準として教職調整額の支給その他の措置を講ずべき旨定める(同法8条)とともに,超過勤務をさせる場合を条例(給特条例)で定める場合に限定している(同法11条)。
また,給特条例は,給特法が昭和47年1月1日から施行されたのに伴い,東京都の義務教育諸学校等の教育職員の給与その他の勤務条件について特例を定めるために制定されたものであるところ(乙13参照),教育職員について給与条例17条(超過勤務手当に関する規定)の適用を除外し(給特条例3条3項),他方で給料月額の100分の4に相当する額の教職調整額を支給する旨定める(同条例3条1項)とともに,教育職員については原則として超過勤務及び休日勤務はさせないものとし,超過勤務及び休日勤務をさせる場合を限定している(同条例5条)ページ(4)
給特法及び給特条例の前記各規定を制定した所以は,教育職員の職務,勤務内容は一般の職員とは異なる特殊性を有しており,その特殊性に応じた給与体系を定める必要があったからである。
すなわち,教育職員の職務は,児童生徒との間の直接の人格的接触を通じて,児童生徒の人格の発展と完成を図るものであり,創意工夫によりどこまでも広がる可能性をもっており,本来的に教育職員の自発性,創造性に期待する面が大きいという特徴がある。
また,教育職員の職務内容は,1勤務時間中の授業活動のように教育職員の本来の職務であることが明らかなものと,自宅でのテスト等の採点,教材の検討・準備などといったそれ自体職務の遂行であることは明らかであるが時間管理が困難なものとが混在していること,2職員会議,各種委員会,研修会への出席等の本来の職務に付随する業務といえるもの,クラブ活動の指導,登下校指導などのように本来の職務か否か必ずしも明らかでないもの,PTA活動,生徒や父母からの相談等広義では教育活動といえるものの直ちに業務ないし職務行為とは言い難いものまで,その職務内容は千差万別で多様であるという特徴を有している。
そして,教育職員の職務遂行は,前記職務内容の多様性に対応して,原則として校長等の職務命令により義務としてなされるものから教育職員の自主的な意思によることが望まれるものまで様々である。
さらに,教育職員の勤務形態も夏季休業のように長期の学校外における研修期間が存在するなど一般職員に比べて特殊な面を有している。
給特法及び給特条例の前記各規定は,これら教育職員の職務の特殊性に鑑み,教育職員の勤務のすべてについて一般の職員と同様な勤務時間管理を行うことは適当ではないとの趣旨から,義務教育諸学校等の教育職員等について,その職務と勤務の特殊性を勤務時間の内外を問わずに一体的,包括的に評価することとし,新たに教職調整額を支給する代わりに,超過勤務手当制度は適用しないこととしたものであり,他方,超過勤務手当を支給する必要がないとすると,無制限に超過勤務が命ぜられるおそれがあることから,これを防止するため超過勤務を命ずることができる場合を限定したものと解するのが相当である。
このような給特法,給特条例の各規定の制定趣旨に照らすと,教育職員については,正規の勤務時間を超えて勤務した場合であっても,原則として超過勤務手当は支給されないと解するのが相当である。
しかし,当該超過勤務が命ぜられるに至った経緯,従事した職務の内容,勤務の実情に照らして,それが当該教育職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態でなされ,しかもそのような勤務状態が常態化しているなど,そのような超過勤務の実情を放置すると給特条例5条2項が超過勤務を命じ得る場合を限定して制限を加えた趣旨を没却するような事情が認められる場合には,もはや給与条例17条ないしは労働基準法37条の適用を排除すべき理由がなくなることになると解するのが相当である。
換言すれば,超過勤務が教育職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態でなされ,しかもそのような勤務状態が常態化している等の状況が認められる場合には,例外的に給与条例17条ないしは労働基準法37条の適用が排除されず,超過勤務をした教育職員は,労働基準法37条ないしは給与条例17条に基づき,被告東京都に対し,超過勤務手当等を請求することができるものと解するのが相当である。
以下,このような観点から,本件超過勤務が原告の自由意思を強く拘束するような形態でなされ,しかもそのような勤務状態が常態化していたか否かについて,業務内容毎に検討することにする。
(3)ア職員会議について
(ア)証拠(乙16,17,原告【11ないし14頁】,被告A【1ないし4,9,10頁】,同B【1ないし3,8,9頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,職員会議に関するものは,平成13年度(同年9月5日以降,以下同じ。)が3回(全17回中),同14年度が6回(全27回中),同15年度(同年10月27日まで,以下同じ。)が1回(全7回中)の合計10回である。
b職員会議は,校長の職務の円滑な執行に資するため設置されるもので,校長が主催し,校長の補助機関として事前に用意された議題に関する討論を行ったり,職員同士が報告や連絡等を行うことによって,相互の意思疎通を図ることを目的に実施される(学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)55条,23条の2参照)。
α中における職員会議は,原則として,月1,2回,授業が5時限(午後2時10分)で終了する水曜日の午後2時40分から午後4時までの間の予定で,校長,教頭を含む全教育職員等が出席して行われていた。
また,α中においては,校長及び教頭を除く教育職員が輪番で職員会議の司会をし,会議内容を記録していた。
なお,平成14年9月13日に開催された職員会議(別紙3超過勤務一覧表番号59)は,生活指導に関する情報交換のため,生活指導部の職員の提案により参加可能な職員を臨時に招集して開催された会議であり,通常の職員会議とは異なり自主的に開催された会議であった。
c被告Aは,α中の教育職員に対し,年度当初の職員会議やその後の職員会議において,職員会議に限らず職務によって午後4時から4時45分までの間に休憩が取れない場合には,適宜振り替えて休憩を取るように指示していた。
また,被告Bも,α中の教育職員に対し,年度当初の職員会議において,同様の指示をしていた。
d被告A及び同Bは,職員会議が午後4時で終了するように計画を立て,司会の職員に対しても進行の指示をしていたが,進行上やむを得ず午後4時を経過する場合であっても,自ら続行を命じたことはなかった。
また,職員会議に参加した職員から,被告Aないし同Bに対し,職員会議が午後4時以降まで続行されたことについて異議等が出されたことはなかった。
e平成14年12月4日に開催された職員会議(別紙3超過勤務一覧表番号73)の司会は原告であったが,原告は午後4時を経過して会議を続行する際,何ら異議を述べなかった。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が職員会議に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
職員会議は校長が主催し,原則として校長,教頭を含む全教育職員が参加して,議題等について職員相互の意思疎通を図ることを目的として開催される会議であり,α中においては教育職員が司会を輪番で行っていたとはいうものの,議事進行について校長が適宜指示を出していたというのであるから,原告の一存で午後4時以降休憩に入ることは困難であったということができる。
しかしながら,原告が問題とするα中における平成13年度から同15年度までの職員会議は,原則として午後4時までに終了するように計画が立てられており,実際午後4時以降も会議が続行したのは51回中10回と全体の約2割にすぎない。
また,被告Aないし同Bが自ら明示的に午後4時以降の職員会議続行を命じたことはないこと,同人らは進行上やむを得ず午後4時を経過する場合であっても適宜休憩の振替をするよう教育職員に指示していたこと,教育職員から会議続行について異議等が出されたことはなく,原告も自ら司会を行ったときでさえ午後4時を経過して会議を続行することについて何ら異議等を述べなかったことなどの事情に照らすと,原告が職員会議に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
イ学年会について
(ア)証拠(乙16,17,被告A【1,11,12頁】,同B【1,4,11,12頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,学年会に関するものは平成13年度が20回,同14年度が24回,同15年度が11回(同年3月18日,同月19日実施の次年度の生徒のクラス分け作業を含む。)の合計55回である。
bα中における学年会は,各学年毎に学年主任が中心となって同学年の学級を担当する教育職員が連絡,調整等を行う目的で開催する会議である。
学年会は,通常週1回,授業が5時限(午後2時10分)で終了する日(平成13年度,同15年度は月曜日,同14年度は金曜日。
ただし,校内研修会実施日に当たる場合は他の曜日とする。
なお,この他に学年主任等が必要に応じて適宜開催する場合がある。)に,午後4時終了を目途に開催されていた。
学年会にはページ(5)
校長は出席しないが,運営委員会において学年主任から校長に対し必要事項が報告されていた。
なお,被告Bは,学年主任に対し,学年会を計画的に進行し,午後4時までに終えるように指示していた。
c被告A及び同Bは,教育職員から,学年会が休憩時間に掛かって延長されることについて抗議を受けたことはなかった。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が学年会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
α中における学年会は,教育職員が学年毎に連絡及び調整を行う目的で開催する会議であり,校長自らが出席したり他の教育職員に対し明示的に出席を命令することはなかったが,各学年において担任ないし副担任をする以上は出席が当然に予定されていたということができる。
しかしながら,α中における学年会は,各学年主任に議事進行が任されており,校長は運営委員会において必要事項について事後的な報告を受けるにすぎなかったというのであるから,参加者である他の教育職員も議事進行について意見を述べることは比較的容易であったものと推認することができ,午後4時以降続行するか否かや退勤時刻後に行うか否かは参加した教育職員の自主的な判断により行われていたものと評価するのが相当である。
また,α中における学年会は度々午後4時以降続行されていたが,被告Aないし同Bは,原告を含む教育職員からこれについて抗議等を受けたことはなく,このような学年会の実態を認識し,それを容認していたとまでは認めることは困難である。
これらの事情に照らしてみると,本件超過勤務のうち学年会が約半数を占めており,度々午後4時を経過して続行されていたものということはできるものの,それは参加者の自主自発的な意思によるものというべきであって,原告が学年会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
ウ三者面談について
(ア)証拠(甲6,乙16,被告A【1,7,8,12ないし15頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,三者面談に関するものは10回である。
原告は,三者面談を実施した日は,概ね休憩時間の全部を面談に充てていた(別紙3超過勤務一覧表番号13ないし16,22ないし25,39,40)。
bα中における三者面談は,原則として,校長が予め職員会議で担任教諭に確認の上で設定した期間(例年11月及び12月の各5日間)の午後2時から午後4時までの間,進路指導や学習・生活指導を行うため担任,保護者及び生徒の三者により実施されていた。
α中における三者面談の具体的な実施日時,面談時間,順番等は,保護者の希望を踏まえて各クラス担任が裁量により調整しており,保護者の都合等によっては,退勤時刻後や期間外の日時に行われることもあった。
c原告が平成13年度に担当した3年3組の生徒数は34名であった。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が三者面談に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
α中における三者面談は,原則として校長が定めた期間内に行うものとされていたが,実施予定期間内での時間の割り振りは各教育職員の裁量に任されていたこと,実施予定期間外に行うことも許されていたこと,時間の割り振り次第では午後4時から午後4時45分までの間に休憩を取ることも可能であったといえることなどに照らすと,原告が概ね休憩時間の全部を面談に充てていたことは原告の自主自発的判断によるものというべきであって,原告が三者面談に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
エ保護者会について
(ア)証拠(甲8,乙16,17,被告A【1,4,15,16頁】,同B【1,6,7,14ないし16頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,保護者会に関するものは6回である。
bα中における保護者会は,学校から保護者に対する進路説明,学年・学級運営に関する連絡及び保護者からの意見聴取等を行うため,年に2,3回開催されていた。
α中における保護者会は,通常,午後の授業を中止し,あるいは授業が5時限(午後2時10分)で終了する日の午後2時から午後4時までの間に行われていた。
α中における保護者会は,予め年間計画において予定されていたが,この他に教育職員が必要に応じてPTA委員と相談の上自主的に開催することもあった。
臨時に開催される保護者会では,保護者の出席確保のため,退勤時刻後に開催される場合もあった。
c平成14年10月11日に開催された1年3組保護者会(別紙3超過勤務一覧表番号67)は,原告が理科の実験実習等において授業運営に支障が生じており,保護者の理解を求める必要があるとして,原告の呼びかけにより学年主任等と相談の上実施した臨時の学級保護者会であった。
d平成14年10月30日に開催された保護者会(別紙3超過勤務一覧表番号68)は,前記cの保護者会で話し合われた内容について学年全体の保護者の理解を求める必要があるとして,1学年の担任とPTA委員とが相談の上開催した保護者会である。
e平成15年2月14日に開催された1年3組保護者との話合い(別紙3超過勤務一覧表番号89),同年3月5日開催の1年2組保護者との話合い(別紙3超過勤務一覧表番号92)は,いずれも理科の授業等の運営に支障が生じており保護者の理解を求めたいとの原告の希望により,1学年担当職員内で相談の上実施された保護者会(学級懇談会)である。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が保護者会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
α中における保護者会は,予め年間計画において予定されたものと教育職員とPTA委員らが相談の上,臨時に開催されたものがある。
臨時に開催された保護者会は,授業運営についての支障に対処する目的などで開催され,多数の保護者の出席を確保する必要がある場合には,やむを得ず退勤時刻後に開催される場合もあった。
臨時に開催される保護者会は,校長の命令により開催されるものではなく,むしろ現場の教育職員,PTA委員らの提案により開催されるものである。
本件超過勤務中,年間計画において予定されていた保護者会は,平成13年10月30日開催の保護者会(別紙3超過勤務一覧表番号11)だけであり,他は授業運営に支障が生じていたことから,主に原告の提案に基づいて開催されたものであって,その際多数の保護者の出席を確保する必要があったため勤務時間外に行われたものといえるから,これらをもって原告が保護者会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
オ校内研修会について
(ア)証拠(乙2,16,17,被告A【1,8頁】,同B【1,5,6,16ないし18頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,校内研修会に関するものは6回(後述する学校全体で行うものが4回,各教科別に行われるもの(原告は理科部会)が2回)である。
bα中における校内研修会は,教育職員の指導力の向上,教育活動全体の質的向上を目指し,相互に研鑽を積むことを目的として,後述する校務分掌部会の1つである校内研修推進委員会が計画を立てて実施されている(なお,原告は,平成14年度校内研修推進委員会委員であった。)。
α中における校内研修会は,通常,職員会議や校務分掌部会などのない水曜日(授業が5時限で終了する日)の午後2時40分から午後4時までの間に実施されており,学校全体ページ(6)
で行うものと,各教科別に行われるものがあった。
学校全体で行う校内研修会には,原則として校長及び教頭を含む教育職員全員が出席していたが,各教科別に行われる校内研修会には,校長及び教頭は出席せず,少人数(本件超過勤務における理科部会は3人)で行われていた。
c被告Aは,学校全体で行う校内研修会が午後4時に終了しそうにない場合には,区切りのよいところで終わるように指示していた。
d平成14年9月25日に開催された校内研修会(別紙3超過勤務一覧表番号63)は,他校の教諭を講師として招いて行われたが,原告の講師に対する質問が長引くなどしたため,終了時刻が午後4時を過ぎた。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が校内研修会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
α中における校内研修会は,校内研修推進委員会が計画を立てて実施される教育職員の研鑽であり,実施内容等については教育職員による自主性が尊重されている。
校内研修会は午後4時までには終了するよう計画が立てられ,実際,学校全体で行う校内研修会は,外部講師を招いて実施されたとき以外休憩時間の振替が可能な5ないし10分間程度超過したにすぎない。
また,原告が所属していた理科部会は,少人数で行われていたのであるから,原告が議事進行について意見を述べることは容易であったものと推認することができ,休憩時間に掛かってなお続行するか否かを含めて参加者の自主的な判断に任せられていたということができる。
これらの事情に照らすと,原告が校内研修会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
カ校務分掌部会,委員会について
(ア)証拠(乙1ないし3,16,被告A【1,17,18頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,教務部会に関するものは1回,校内研修推進委員会に関するものは2回である。
bα中には,校長の下,教務,生活指導,進路指導,保健給食,事務用務などの校務を分担する校務分掌部会,体育行事,文化行事,儀式,校内研修などの各種行事を執り行う委員会があり,各教育職員がこれに所属していた。
教育職員は,校務分掌部毎に意思疎通を図るため部会を開いていた。
委員会は,それぞれ担当する行事毎に打合せを行っていた。
校務分掌部会,委員会共に少人数で行われている(教務部会7人,校内研修推進委員会3ないし4人)。
委員会には教頭が出席する場合があった。
(イ)前記(ア)で認定した事実を前提に,以下,原告が校務分掌部会,委員会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたといえるか否かについて検討する。
α中における校務分掌部会及び委員会は,校長の下,校務を分担し各種行事を執り行うものであるが,それぞれの任務を果たしたり,構成員間の意思疎通を図るための会議,打合せについては比較的少人数で行われており,原告が議事進行について意見を述べることは容易であったものと推認することができ,休憩時間に掛かってなお続行するか否かを含めて参加者の自主的な判断により行われていたものということができる。
実際,校務分掌部会ないし委員会が休憩時間に掛かって行われたのは3回にすぎない。
これらの事情に照らすと,原告が校務分掌部会ないし委員会に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
キ登下校指導について
(ア)証拠(甲7,乙17,被告B【1,4,12ないし14頁】)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a本件超過勤務中,登下校指導に関するものは1回だけである。
bα中における登下校指導は,校務分掌部会の1つである生徒指導部主導で,一定の期間,教育職員の勤務時間外(登校指導は午前8時から午後8時30分までの間)に,場合によっては保護者らとも協力して実施されていた。
校長は登下校指導について事前に報告を受けるが,教育職員に対し登下校指導に参加するように命令することはなく,各教育職員は生徒指導部主導の下,自主自発的に登下校指導に参加していた。
(イ)前記(ア)認定の事実によれば,原告は,生徒指導部主導の下,自主自発的に登下校指導に参加したものであり,登下校指導に関して自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
クその他
前記1で認定した事実によれば,原告は前記アないしキで判示した職務のほかに,1保護者を交えた生徒指導(別紙3超過勤務一覧表番号1),2運動会に関する打合せ(別紙3超過勤務一覧表番号2),3運動会後の後片づけ(別紙3超過勤務一覧表番号5),4入試関係に関する事務(別紙3超過勤務一覧表番号7,31,46),5総合学習の準備(別紙3超過勤務一覧表番号36,43),6校外での不審者への対応(別紙3超過勤務一覧表番号49),7備品点検(別紙3超過勤務一覧表番号54),8音楽鑑賞教室への出席(別紙3超過勤務一覧表番号65),9教室内でのいたずらに対する対応(別紙3超過勤務一覧表番号82,83,86),10合唱コンクール後の下校指導(別紙3超過勤務一覧表番号93)により休憩時間ないし退勤時刻後に勤務をしたものと認められる。
しかしながら,証拠(乙16,17,被告A【1,5ないし7頁】,同B【1,4,5,7頁】)及び弁論の全趣旨によれば,これらの勤務はいずれも原告の自主自発的な判断に基づき勤務時間外に行われたもの(2,4(別紙3超過勤務一覧表番号46),5(別紙3超過勤務一覧表番号43),7)か,又は主に外部的な要因により臨時的に勤務時間外に行わざるを得なかったもの(1,3,4(別紙3超過勤務一覧表番号46を除く。),5(別紙3超過勤務一覧表番号36),6,8,9,10)であり,休憩時間の振替が可能であった場合もあるなど,いずれも原告が自由意思を強く拘束されるような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできず,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。
(4)小括
以上検討したところによれば,原告は度々超過勤務を行っており,その中には学校側の工夫次第で勤務時間中に行えたと考えられるものもなくはないが,個々具体的な事情に照らしてみれば,いずれも原告が自由意思を強く拘束するような形態で超過勤務をさせられ,そのような勤務が常態化していたとまでいうことはできない。
そうすると,給与条例17条ないしは労働基準法37条の適用が排除されないといった例外的事情の認められない本件超過勤務にあっては,原則に従い,給特法10条,給特条例3条3項の規定どおり,被告東京都は,本件超過勤務について,原告に対し,超過勤務手当を支払う義務はないというべきである。
3争点3(謝罪文交付の成否)について
(1)被告Bの本案前の申立てについて
被告Bは,原告が被告Bに対し個人責任を追及することは国家賠償法の趣旨に照らして許されないと主張して,被告Bに対する訴えを却下するとの判決を求めている。
しかしながら,前記被告Bの申立ての理由は,請求権の存否に関するものであって,かかる理由によって訴えが不適法になることはなく,被告Bの本案前の申立ては,その余の点を判断するまでもなく理由がない。
(2)本案について
原告は,公務の執行に違法がある場合,当該公務の違法性が重大であり,かつ当該公務員がその違法性を認識していページ(7)
る場合には,公務員の個人責任が認められるべきであると主張する。
この点,原告の主張は,被告A及び同Bが原告に対し違法な職務命令を出したことを前提とするものであるが,かかる職務命令は公務員がその職務を行うについてした公権力の行使に当たるから,仮にそれが認められるとしても国家賠償法1条1項が適用され,公共団体である東京都がその賠償の責に任ずるのであって,公務員個人はその責を負わないものと解するのが相当である(最二小判昭和53年10月20日・民集32巻7号1367頁参照)。
なぜなら,1国家賠償法は国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体がその公務員に故意,過失のいずれがあるかを問わずこれを賠償する責に任ずるものとしながら(同法1条1項),公務員の個人責任については,当該公務員に故意又は重大な過失があったとき,国又は公共団体はその公務員に対し求償権を有する旨規定するのみで(同法1条2項),その公務員個人の他人に対する損害賠償責任について何ら規定していないこと,2公務員個人は責任を負わないと解しても被害者の救済に欠けることはなく,加害者個人に対する制裁は別途懲戒,刑事処分等によって図られるべきであるからである。
したがって,前記原告の主張は理由がなく,採用することができない。
のみならず,被告A及び同Bは,原告に対し,本件超過勤務に関して明示の職務命令を出したことはなく(争いがない。),また,前記2で判示したとおり,被告A及び同Bが給特法ないし給特条例に反して原告に超過勤務を強制したことも認められない本件にあっては,本件超過勤務について被告A及び同Bの違法は認められない。
以上によれば,原告の被告A及び同Bに対する謝罪文の交付請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
4結論
以上から明らかなとおり,原告の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することにする。

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